僕の妻は1度記憶を失くしています。
交通事故に巻き込まれ、頭を強く打ち、意識不明の状態。何日眠り続けたでしょうか。
このまま目を覚まさなかったらと不安ばかりが襲ってきましたが、妻は奇跡的に意識を取り戻しました。
しかし、事故の後遺症で僕のことはもちろん、親のことも何もかも忘れてしまっていました。
容態がよくなりリハビリをする様になってからは、ハッキリと物事がわかる様に。
だんだん幼い頃の記憶も取り戻していたので、僕のこともそのうち思い出してくれると思っていました。
お見舞いに行き、リハビリの手伝いをする毎日。
しかし、僕の事は一向に思い出す気配がなく、なぜ毎日来てくれるのか?という様な不思議そうな顔を浮かべていました。
僕はそれでも妻のことは自分がなんとかしなければと思い、僕たち夫婦が住んでいた家に戻り、そこでリハビリをすることに。
妻は右半身も麻痺が残っていて、うまく生活をすることは中々難しいようでした。
少しでも妻が僕たちのことを思い出してくれればと、写真を見せたり妻の昔の話をしたりしました。
しかし妻は他人事を聞いているかのように上の空といった様子で、僕に昔の話しをするのを止める様言ってきたのです。
僕は、少し焦る気持ちもありました。
昔の友達のことは思い出せるのに、なぜ僕のことは思い出せないのかと。
そして、妻も妻でこのモヤモヤな感じをすごく嫌っていた為か、僕たちは次第にケンカをすることが増えていきました。
昔の妻と今の妻とではまるで別人。
好きな色、好きな物、全て間逆。
僕のことも、だんだんと嫌うようになっていきました。
そして僕たちは話し合いの結果、別れることにしました。
妻もこの時には、一人でも日常生活に困らない程度には回復していたので、僕がいなくても大丈夫だったのです。
このまま偽りの夫婦関係を続けていても妻が疲れるだけ。
妻にはまた一から人生をやり直してもらうため、お互いに別の道を歩んでいくことにしました。
それから五年ほど月日が流れ、僕は偶然にも彼女の働いていたお店にランチを食べに行きました。
僕は全く店員を見ていなかったので気が付かなかったのですが、彼女が僕に気付き、お店を出た際に引き止めたのです。
あの…覚えていますか?
私、あなたに本当にひどいことをしました。
ずっと謝りたかった。本当にごめんなさい、ずっと一緒に支えてくれたのに。
私はまだ、あなたのことは思い出せません。
でも、事故にあってからずっと一緒にいてくれた。
私を励ましてくれた。勇気付けてくれた。
そんなあなたの事を忘れることができなかった。
また偶然に会うことができたら言おうと決めていたの。
もう1度、一から私と思い出作ってくれませんか?
付き合ってもらえませんか?
僕は妻の事を一時も忘れたことなんてなかった。
僕はどんな妻だろうと支えていきたい。
もう2度と手を離したくはない。
僕は妻と2度目の結婚式をあげる。
また新しい人生を二人で作っていこう。
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